浄土真宗本願寺派 紫雲山 光明寺

光明寺だより

「髹漆みよし」  

株式会社「髹漆」三好金司

 

 

 「髹漆」とは、漆芸の意味を言い、在来工法、即ち伝承されてきた手工芸。刷毛を用い、化学的工法は使用しない事をおもうが。近年、この工法、材料も全く別物の塗料、下地我が使用され、本来の漆、金箔の質感の違った製品ばかりになり、漆100%ではなく、吹き付け用の純度90%ほどのウルシ?、下地はポリサイト(化学装品)で吹き付けし、これを佛前の荘厳として使用している。全く嘆かわしいことである。

 

 以前、金沢工業大学の小川教授が、漆の効果を調査研究した結果を思い出した。漆には、抜群の殺菌の効果ある。プラスチック、ガラス等の化学製品に大腸菌を塗布した結果、化学製品の滅菌は得られず、「漆の効果は、千分の一まで減少との結果が発表された。故に、仏事等の朱膳は元来、水銀朱が練り込んであり、高価であり、それ以上の効果があると考える。

 

 また、本漆は、梅雨時期や雨天の際にも、全くと言って良いほど曇りや水分が生じにくい。これは基の木材から上塗りまで通気を遮断しないことに他ならない結果であり、殺菌と曇りのない世界を顕(あらわ)すことは「お浄土の世界」、つまり、何も変わらぬ不変の世界を顕すための材料とあらためて思うことである。

 

 先日、朝日新聞「天声人語」欄に、自動車メーカーの性能試験の不正についての掲載があった。トヨタ自動車の豊田章男会長は会見で、「ブルータスお前もか」との感想を言ったことは、自社の不正に関して発する言葉ではなかろう、顧客の言葉を奪ってはならぬ」と。

 トップの信念や自らの経営の姿勢に変化があってはならない。ましては、人々の命に関係する「ものづくり」に。

 

 日本の「ものづくり」には、丁寧さがあります。この伝承されたものづくりを裏切ってはいけない。ましてや、仏さまの御前の荘厳具、構造物の施工に於いては、みだらな心、不誠実な姿勢があってはならない。経営トップ者たちは、自らが引き受け継承してきた創業者達の願いを命懸けで相続し、次代へのバトンタッチにふさわしい人々を創っていかねばならない。

 

 私は、当社創建の際、三つの約束を示した。(1)下請けをしない(2)手工業、在来工法、伝承された自然材料を使用し、下地は堅地、本堅地の工法。膠下地(半田地)や吹き付け等、現行の化学装品は一切使用しない。(3)浄土真宗系の仕事しかしない。

 

 創業10年目の小さな会社ですが、この思いは現在も微動だにしない。全てに亘り、トップが転べば、生活から、夢、計画が全てが惑うことになる。思えば、このものづくり、仕事の分別がつく40歳くらいの頃、いつも阿弥陀経を読み、お浄土の世界に憧れを持ち、先人が顕(あらわ)し、形とした荘厳に今でも尊崇の念を思わずにはおれない。今の仕事に誇りと、お浄土の姿を、次代に引き渡す気持ちを持って、『不退』。           合掌