浄土真宗本願寺派 紫雲山 光明寺

光明寺だより

「御本山での仏縁」   

光明寺副住職 傍示顕信

御挨拶

 こんにちは。4月から久留米に帰って参りました。大学のときに久留米を出ましたので約14年ぶりの久留米での生活となります。一昨年の3月に勤めさせて頂いた会社を退職し、昨年度は京都のご本山(勤式指導所)にて、勤式作法(お経を中心に作法や雅楽など)の勉強をして参りました。浅学非才の身ではありますが、今後ともよろしくお願いいたします。

 

 勤式での1年間の生活も終わりかけた頃、ある有難いご縁に恵まれました。「龍笛(りゅうてき)」という、主に雅楽で用いられる笛を購入させて頂いたご縁です。今年の大河ドラマである「光る君へ」でも雅楽の演奏シーンが度々出てくるので、雅楽に少し馴染みが感じる方もかなり増えたのではないでしょうか。

 なぜ仏教で雅楽?と思われる方もおられると思います。私も最初はそうでした。今は専ら神道で依用されるイメージが強いとは思いますが、実は元を辿れば、聖徳太子が中国から仏教を取り入れられたときに、一緒に取り入れられたようです。中国仏教で雅楽が用いられていたようですから、それに倣おうといった形です。浄土真宗では、第14代御門主様である寂如上人の時代に取り入れられた記録があり、今日まで受け継がれています。本山の御堂衆(勤式のプロ集団)による雅楽の演奏は圧巻ですので、ぜひいつか御門徒の皆さまと一緒に本山にお参りを、と考えております。

 

 雅楽は世界最古のオーケストラと言われ、千年以上の歴史があります。雅楽の楽器は基本の3つがあります。それは主旋律を奏でる「篳篥(ひちりき)」、篳篥の旋律を装飾する「龍笛」、演奏を和音でしっかり支える「鳳笙(ほうしょう)」です。篳篥は大地の人の声、鳳笙は天から差し込む光、龍笛は天地の間を飛ぶ龍の鳴き声を表すとされます。他にも打ち物や、琴、琵琶が入ったりすることもあります。勤式では、3つのうちどれか1つを選んで専攻する形だったので、私は龍笛を選びました。入門編ということで、プラスチック製の笛を購入して練習や試験に臨みました。いずれは皆、「本管」と呼ばれる、職人さんが自然の竹で作られる笛を購入することになります。本管は、まず品質の良し悪しがあり、1つ1つ個性もあるので、奏者と笛の相性があるとされます。ゆえに、本管を10本並べて、購入に至るものが1本あればいいくらいなのだそうで、龍笛の先生からも「本管は自分に合うものをゆっくり探していくように」と言われていました。気軽に買えないような値段でもあるので、急いで焦って買うわけにもいかないという事情もあります。

 

 

 今年の2月頃に、思いがけず、本管の買い手を探している方がいるという話を頂きました。在学中は本管購入は全く頭に無かったので、お話だけ聞くつもりで連絡を取ってみました。試し吹きをさせて頂いたところ吹きやすくて、先生にもお見せしてご推薦(後押し)を頂けたりなど、いろいろなご縁が重なり、購入に至ることができました。

 

 持ち主の谷川さん(仮名)とは購入のやり取り以外にも、いろんなお話をさせて頂く中で、お家が私が働いていた群馬の会社の近くで、さらに久留米にもゆかりがある方で、お互いに意外なご縁があることがわかりました。さらに、今回購入した笛は、谷川さんのご友人である原田さん(仮名)が亡くなる直前に、原田さんから買い取られた笛だったのですが、原田さんの戒名に、光明寺の山号である「紫雲」が使われていたそうです。谷川さんはこの不思議な縁を目の当たりにして、「あなたに譲るために原田さんから預かっていただけなのかもしれない」とおっしゃっておられました。今回、私以外にもこの話を聞かれた方が多くおられたようですが、その中で私の元に来てくれたのも、単なる偶然ではなく、何かに導かれて来たように思えます。

 

 原田さんは、雅楽がお好きで笛をとても大事にされていたそうです。お会いしたことは無いですが、その思いを受け継いで精進していきたいと思います。ちなみに谷川さんは、おそらく日本で指折りの龍笛奏者として活躍されておられる方です。レベルも活動の場も違うのもあり、今回の件が無いと出会うことも無かったと思います。そのことも含めて、本当に尊いご縁となりました。

 

 今年の11月30日(土)は、光明寺の報恩講法要、並びに、祖父(前住職)の25回忌の法要として、雅楽を依用する予定です。このような雅楽を用いた荘厳な「音楽法要」は、なかなか無いことですので、ぜひこの機会にご参拝ください。ご門徒様に限らず、ご親戚・お知り合い・ご友人などお誘い合わせの上、どなたでもお待ちしております。

合掌