浄土真宗本願寺派 紫雲山 光明寺

光明寺だより

日本仏教へエールを送る!

中垣顕実法師

 私自身はもうそろそろ40年近くアメリカに住んでいるので、日本のことをどうこう言いえる立場ではありませんが、外にいるから見える部分もあるので、そのあたりを私の視点で述べさせて頂きます。私は仏教のもつ価値観、思考が今後の世界の行方の大きな鍵を握っていると考えております。国連が掲げるSDGの内容を見ても仏教がその答えをなっている場合が多いのではないでしょうか。

 先月8月はNYの国連本部で核兵器のNPT再検討会議が開かれましたが、核兵器に関しては唯一の戦争被爆国の日本が本来もっとリーダーシップを取ることができる分野であり、アメリカやロシアに対しても積極的に対話を進めるような外交がなされてもよいはずです。現在のロシア・ウクライナ戦争、中国・台湾情勢などに関してもそうですが、ただ欧米の顔色を伺うだけではなく、しっかりとした仏教のような平和思想に基づき、行動することが大切だと思います。仏教的慈悲の世界が、武器を捨ててこそ真の友好関係が結ばれる道を開いてくれるのではないのでしょうか。

 西洋の社会の中に住んでいると、東洋や仏教との違い肌で感じられます。イエスとノーでしかものを考えない、いつも右と左が対立しあい、平行線で決して交われない考えは、一層の対立を生み、敵・味方をつくり、互いに避難し合うような社会を作り出しているように思われます。西洋にはない中道の考え、怨親平等の世界、縁起の法則、怒りや我欲の煩悩から離れる等の仏教の基本的考え方が、この世を破滅ではなく、調和のある、互いに尊重し、平和な世界に導くことができると思うのです。

 宗派の利益を考えねばならないのもわかりますが、もっと広い意味で様々な仏教の宗派が互いに協力する必要があると思うのです。平和も一宗派や一宗教のみでは築けないように、様々な宗派、宗教が協力しなければ成し遂げることは難しいものです。NYではインターフェイス(超宗教)が最近は普通になっていますが、宗教や宗派が率先して違いを超えて協力し、人々の手本となるように行っている面もあります。仏弟子の一人一人がナンバー1であるように(智慧第一の舎利弗、神通第一の目連など)、一つ一つの宗派はそれぞれナンバー1ということでお互いに協力しあい、学びあうような一面があって良いと思います。それによって足を引っ張りあうのではなく、互いに切磋琢磨し、より真理に近づけるようにしていく道があると思います。

 最後に、オーム真理教のサリン事件の時も気になり、今回の安倍首相銃撃事件で浮上した統一教会のことでも気になったのですが、臭いものには蓋をしろ、触らぬものに祟りなしという感じで、なぜか宗教者もあまりニュースなどでは見かけません。こういう事件が起こるたびに仏教、宗教というものは恐ろしいものであると言うイメージを植えつけるばかりで、仏教とは本来どういうものなのか、仏教や宗教のもっている様々な側面をもっと人々が理解するような発信を宗教者自身が行なっていくべきではないかと思います。こんな時こそ、仏教の専門家とかリーダーが「宗教についてもっと日本人が知る必要がある」ことをしっかり発信し、一般の人々への仏教イメージを変える時期だと思います。グローバル社会なのですから、さまざまな宗教も学び、違った価値観が存在することを知っておくことは世界に出る上でとても大事だと思います。

頑張りましょう!南無三宝。